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単一分子検出による新しい光学イメージング技術

 光学顕微鏡によって個々の蛍光分子を直接検出することで、様々な情報が明らかになる。我々は新規な光学イメージング技術を用いることで単一高分子鎖の構造およびダイナミクスの評価を目指している。以下に述べるような超解像検出をはじめとする先端の光学顕微鏡技術の開発により、特に単一高分子鎖に着目して、その構造とダイナミクスの研究を行っている。

単一分子の超解像観察

 従来の光学顕微鏡では空間分解能は回折限界によって制限され、無限小の物体であっても光の波長半分程度すなわち200~300 nmに広がって観察される。そのために視野内に複数の分子が存在しても、波長以下の距離に近接するとそれらを見分けることができない。一方、視野内に“ただ一つ”の分子しか存在しない場合では、その位置については数 nmの精度で決定することができ、これはFIONA (Fluorescence Imaging with One-Nanometer Accuracy)として知られている。右図はPMMA膜中に分散した単一蛍光分子について位置決定精度を実測したも結果であり、3 nmの分解能が得られていることが分かる。
 このように回折限界下においてもナノメートルスケールの空間情報を得ることは可能であるが、上述のようにこれは視野内にただ一つの分子が存在している場合においてのみ成り立つ。しかし同一視野内に複数の分子が存在する場合でも、その中のただ一個のみを選択的に光らせて独立に観察し、これを全ての分子について逐次計測することが出来れば、空間内での複数の色素分子の分布を知ることが可能となる。このような計測は、分子構造の異性化によって蛍光体と非蛍光体との二状態をとることができるフォトクロミック色素分子を用いることで実現され、Photo-Activation Localization Microscopy (PALM)あるいはSTochastic Optical Reconstruction Microscopy (STORM)として近年大きな注目を集めている。
 右図はPALMの測定プロセスを示している。始めに全色素分子を非蛍光体に転換(図A)した後、その内の分子一個のみを蛍光体へ転換する(図C)。その蛍光画像を取得し、位置を解析して再構築画像中の記録した(図D)後に再び非蛍光体へと転換する。このプロセスを図E, G, Iのように繰り返すことで系内の全ての色素分子の位置をナノメートルの分解能で決定することができる。こうして得られた全ての分子の位置を一枚の画面にプロットすることによって再構築画像Lを得ることができる。このようにして得られる超解像画像の分解能はFIONAの位置精度によって決まり、<10 nmの空間分解能を達成することができる。
 ※ 超解像光学顕微鏡を自作する方法を公開中

デフォーカスイメージングによる単一分子の配向評価

 分子一個一個の状態を経時的に追跡することができれば、分子のダイナミクスについて詳細な知見を得ることができる。分子の位置座標についてはFIONAにより数nmの分解能で決定できるため、並進拡散を高精度に評価することが可能であり、これまでに様々な系を対象に研究が行われている。一方、分子のダイナミクスを議論する上では並進運動だけでなく回転運動を評価することも重要である。分子の回転を評価するためには個々の分子に対して配向状態すなわち極角および方位角の双方を同時に決定する必要がある。三次元配向を一枚の蛍光画像から直接決定することのできるデフォーカスイメージングはリアルタイムで分子運動を評価する最適な手法である。デフォーカスイメージングは"ピントの合った"状態からレンズをシフトさせることで得られる画像パターンを解析することで分子の配向を決定する。図は様々な配向角に対して計算されたデフォーカスパターンである。このようにデフォーカスパターンでは分子の配向方向に依存した特徴的な形状を示し、これを解析することで分子の配向パラメータである極角θおよび方位角φを同時に決定することができる。このように先進の蛍光検出技術を用いることにより、分子一個一個の運動状態を完全に追跡することができるようになっている。