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高分子ナノ粒子による分子イメージング

 分子イメージングとは、生体内における分子プロセスを可視化する技術であり、創薬や病理・オーダーメード医療などへの応用が期待されている。抗原-抗体反応などを利用することで目的の組織に集積させたり、そこで信号の変調を起こす試薬(分子プローブ)を用いることで、腫瘍などを選択的にイメージングするものである。
 我々のグループでは、高分子材料によるナノメートルスケールの微粒子を作製することで、その分子プローブとしての応用を研究している。高分子ナノ粒子(Polymer Nano-Particle: PNP)は様々な機能分子を内包することができるコンテナとして用いることができ、蛍光物質などの信号を発する分子を閉じ込めることで画像検出することができるだけでなく、薬剤などの運搬を担わせることが可能である。また体内での動態に関しても、それ自体がEPR効果による腫瘍への集積能を持つだけでなく、抗体などの分子で表面を容易に修飾することができ、動態をコントロールすることも可能である。このようなPNPを用いることで、様々なモダリティに対応した分子プローブの開発を行っている。以下にこれまでの研究成果の例を示す。

狭バンドギャップ共役高分子ナノ粒子によるin vivoイメージング

 分子プローブの蛍光発光をイメージングする蛍光イメージングは、空間分解能や検出感度が高く、また装置構成も簡便であるため、広く用いられている。しかし光は生体組織自体の強い吸収と散乱のために深部の観察が困難である。そのために透過率の高い近赤外光の利用が望まれるが、近赤外領域での蛍光物質は発光強度が低いものが多く、感度の点で問題がある。
 我々は、赤色〜近赤外領域に吸収帯を有する狭バンドギャップ共役高分子を用いることで、発色団のみから構成されるために非常に高い吸光係数を有するPNPを作製し、強い発光性を示すプローブの開発に成功した。またエネルギー移動を利用することで近赤外発光の増強にも成功し、高感度のin vivoイメージングを実現した。

図1. 狭バンドギャップ共役高分子の構造(a)とナノエマルジョン法によって作製したナノ粒子の粒径分布・電子顕微鏡画像(b)。エネルギー移動による蛍光増強によって高感度のin vivoイメージングを実現している(c)。

フッ素高分子デンドリマーによるin vivoイメージング

 磁気共鳴イメージング(MRI)は生体深部に対して3次元観察が可能なモダリティであり、臨床でも広く用いられている。通常のMRIでは水素原子をプローブとして画像化を行うが、水素原子は生体内の至る所に存在するため、特定の分子プローブのみを見分けて選択的に検出することは困難である。MR活性核のフッ素原子(19F)は天然存在比が100%であり、高感度のMR検出が可能である。そのためフッ素原子を含有する分子プローブを作製することで、MRIでの高感度の分子イメージングが可能になるものと考えられる。
 当研究グループでは、フッ素含有高分子のナノ粒子を作製し、in vivoイメージングへの応用を行った。ナノ粒子作製の方法として、リビング重合を利用した。下図(a)に示すように、デンドリマーの末端に重合開始基を導入した多官能開始剤からフッ素含有モノマーの原子移動ラジカル重合(ATRP)を行うことで、ナノ粒子構造の作製を行った。重合度によってサイズを厳密に規定することができ、ランダム・ブロック共重合によって物性制御を行うことに成功している。このようなプローブを用いて、図(b)に示すようにラットのin vivo MRIに成功している。

図2. リビングラジカル重合法による高分子ナノ粒子の作製の模式図(a)と、フッ素高分子プローブによるラットのF-MRI画像(b)。